十二社の住人となってからおよそ四半世紀だが、今回やっと3回目。
前回は一昨年の2月、
http://ei8at12so.seesaa.net/article/33733651.html
その前となると1993年(だったはず)。
とにかく古臭くて、最近の各地のスーパー銭湯などと比べると、設備は貧弱。
それなのに料金はそれらの2倍くらいする。そうそう行こうという気は起きない。
この日もどうするか、かなり悩んだが、
やはり思い出のため行っておくかと、昼頃に向かった。
ウチから450mほどの道のり。直線距離なら250mくらいの近所。
十二社通りに面したマンションの地下。

「昭和三十二年開店」とあるが、定礎を見るとこのマンションが建ったのは昭和53年。
これについては後ほど解説。

薄暗い階段を下りていく。黄泉の国へ赴く気分。

受付で1900円(貸しタオル等不要の場合)支払う。

喫茶店で使われてるようなクリップボードに挟んだ伝票を渡される。
靴をロッカーにしまって、浴室入口の受付へ。

そこのおばちゃんに伝票を渡すと、なんと名前を聞かれ伝票に書き込まれるのだ。
お風呂だけで名前聞かれるところってあんまりないよね。
(この写真を撮ったときはおばちゃんは食堂のほうの仕事していた)
ここでロッカーキーを渡される。
まあ、今さら細かくレポートしても、もう役には立たないが。
さて、お風呂へ。
都心の温泉ではお馴染みの黒湯。
一番最近に入った黒湯は1月、南麻布の竹の湯。
http://ei8at12so.seesaa.net/article/113239437.html
その他にも、麻布界隈では十番温泉に併設されてた越の湯、
白金の玉菊湯にも行ったことがある。
武蔵小山の清水湯にも黒湯の温泉がある。
http://ei8at12so.seesaa.net/article/105833924.html
同じ黒湯でも、ここは「濃さ」みたいなのが抜きん出ているように改めて感じた。
よく黒湯は見た目がコーヒーに例えられるが、
見た目だけではなく、入った感覚を「濃さ」に置き換えたとして、
他の黒湯はアメリカンとか、せいぜい普通のブレンドなのに、
ここはエスプレッソ、いやいや、トルココーヒーじゃないかな。
とにかく、そんなトロトロな感じのするお湯に浸かってると、
ホントにここの古さとかボロさはどうでもよくなってくるから不思議。
過去2回で入ってなかったサウナ室に入ってみる。
4人でいっぱいになっちゃう狭さ。TVなんてもちろんない。
再びお風呂へ。
やっぱりこのお湯、たまらない。
なくしちゃうの、もったいない。
結構お客入っていたが、皆さん同じ思いだったのでは。
温泉に浸かってこんなにしんみりしたのは初めてだ。
後ろ髪引かれる思いで上がる。
ロッカールーム。




せっかくなんで、お昼ご飯も戴こう。


生姜焼き定食を注文。




ここ十二社での胎内回帰的感覚は、住みついてからずっと感じている。
そんな土地のさらに地下。まったりしないわけがない。
ああ、ホントにもったいない。

地上へ。黄泉の国から戻る。

隣の喫茶店は既に何年も前に閉店。

ここは十二社熊野神社のお祭りの時、宮元睦の詰所になっていた。
http://ei8at12so.seesaa.net/article/55912793.html


ここの最上階に移してリニューアルオープンすればウケるだろうね。
高層ビル眺めながらの天然温泉。マンションだからムリか…。
さて、冒頭で触れた「昭和三十二年開店」について。
以前、新宿歴史博物館で入手した資料をひもといた。
「新宿区の民俗(6)淀橋地区編」。

十二社温泉に関しては以下のような記述があった。
空襲でこの地区は灰燼に帰したが、新宿駅前地区の戦後の発展とともに復興した。昭和28年三業組合の会館として十二社会館が弁天池のほとりに建て、芸事の練習所とした。見番は少し離れた坂の途中にあった。待合としては松川、藤本が有名であった。弁天閣は戦後弁天池のほとりに移ったが、昭和33年に温泉を掘り、十二社天然温泉、大衆浴場として開業した。これはヘルスセンター式の4階の浴場で、入浴の後歌謡ショー等を見て過ごすという形のもので、100畳敷の大宴会場が各階にあった。中は漆塗りで中国式の内装がほどこされていた。
昭和33年と、1年ズレがあるが、その点は不明。
創業が昭和32年でオープンが33年なのか、それとも単なる間違いか。


大規模な「ヘルスセンター式」のものが、今ある十二社通り沿いではなく、
裏道のほうにあったようだ。

地図は昭和30年代のもの。十二社の池も描かれている。
現在の地図はこちら。新宿ニューシティーホテルの隣が件のマンション。
昭和53年のマンション建設で今のかたちになったのだろう。
そのときもかなりの規模縮小だったことになる。
そして今、完全に歴史を終える。
サヨナラ、新宿十二社天然温泉。
追記:
コメントをいただいたさんごママさんの記事は必読。
昭和12年生まれのお方の、貴重な体験。
http://3515.iza.ne.jp/blog/entry/978110/
本当にあの黒湯は惜しいです。
隣の新宿ニューシティーホテルでなんとかならないですかね。
こういう「錆びれたお風呂屋さん特集」でマスコミが取り上げてくれれば良かったのに…でも、マスコミで取り上げても若い人は行かないかぁ。
もったいない気がしますが、1900円っていう料金で解るのは、かなり経営も苦しかったんでしょうね。
しかし、えいはちさんってお風呂屋さん好きですね。
お風呂屋さんマップができますね。
黒湯って都内では結構あるんですが、全国的には珍しいんでしょうか。
ここのは特に濃い感じがするので、貴重な存在だったと思うんですが…。
上がマンションの風呂屋は都内では多くありますが、地下というのは確かに珍しいです。
まだ行ってませんが「シロガネーゼ」で有名な白金に地下にある銭湯があるので、近々行くつもりです。
この件で私もブログ書きました。
私の愛読紙産経にこの閉店の記事をなぜ掲載しなかったのかとクレーム付けました。
前もって知っていたら最後の別れに入浴していたのに残念でした。
ブログ記事、拝読しました。
なんと、僕の母親と同世代のお方、
大変興味深いエピソードを知ることが出来て嬉しく思いました。
角筈アパート跡地の記事も興味深く読ませていただきました。
十二社温泉、最終日に入ってみてその泉質の素晴らしさに改めて驚きました。
なんでもっと早く気づかなかったのかなあ…。
ご近所で又興味の対象も似ているようですね。
私はもうすぐ72歳になりますが、80歳迄現役を頑張るつもりです。
今後ともよろしくお願いします。
80歳迄現役、頼もしいお言葉!
こちらこそよろしくお願いします。