さて、どこへ行こう。
笹塚の栄湯も一応温泉なのだが、泉質がマイルド過ぎて、
銭湯としてはいいのだが、イマイチこの日の気分には合わない。
思い切って大江戸温泉物語とかラクーアとか。
うーん、やはり高すぎるなあ。
麻布十番温泉には銭湯も併設されているので行ってみようか。
麻布界隈の黒湯の銭湯は他に2軒ほど行ったことがあるが、
十番は有名なので混んでるかなと思い敬遠していた。
そろそろ行ってみるのもよいだろう。
で、千駄ヶ谷、東京体育館で泳いでから麻布十番へ行こうと、
プール道具と風呂道具をリュックに入れて自転車乗っていった。
千駄ヶ谷でたっぷり泳いで、次は麻布十番。
だが、この日は妙に風が冷たい。体力の消耗も予想以上。
これから青山、六本木を越えて行くのはキツイなあ…。
あと、あの辺りはまだ流れ弾が飛んでくる危険があるかも…。
で、結局ウチへ帰ってしまった。
帰宅後も温泉行きたい願望は消えず。
で、最後の手段で、新宿十二社天然温泉へ行くことにする。
ここは「近所の風呂屋」で触れたとおり、
数年前に一度だけ行ったことがある。
記憶の糸を手繰ってみると、
ある年の夏休み、信州辺りへの旅行を計画していた。
山歩きして、その後温泉でのんびりなどと考えていた。
ところが夏休み初日、
台風がやってきて、旅行は中止せざるを得なくなった。
翌日は台風一過の晴天。
しかし泊りがけの旅行に行くには夏休みの日数がもう足りない。
そこで山歩きは高尾山で済まし、温泉は十二社で済ますという、
近場・日帰り旅行に変更。
たしかその後、夜中に新宿武蔵野館へ行きオールナイトの映画を見た。
そんなこんなで、なんとか夏休みを充実させることができた。
見た映画は「ジュラシック・パーク」だったので
そいつが公開された1993年のことだと判明。
14年前か。
あの時はもともと旅行でそれなりにカネ使うはずだったので、
料金のことなど気にせず十二社温泉を満喫できたと思う。
また、都内の天然温泉はここと麻布十番くらいだったし。
しかし今では素晴らしい設備の天然温泉が都内に複数ある。
もちろん大半はここより高い料金をとるが、
設備を考えればここの1900円は割高な印象は否めない。
せっかく近所なので(ウチからどの銭湯よりも近い)、
もっと利用したいという気がおきるようにしてほしい。
十二社通りに面したマンションの1階が入り口。
階段を降りて地下へ。料金支払い、中へ。
14年前の記憶は薄れている。こんなかんじだっけ。
とにかく全体に古びた印象。風呂場は特にそう。
黒湯の浴槽が中央にひとつ。あとサウナと水風呂もある。
薄暗い照明。
長い間に温泉成分がこびりついたのかタイルは黒ずみ、
ぶっ壊れたカランは修繕もされていない。
この薄暗さ、古臭さは、
オスマントルコ統治下の時代に作られたという、
ハンガリー、ブダペストのキラーイ温泉を思い出させた。
もちろんここはそんなに古いわけないが。
築30年くらいだろうか。
なのでレトロな味が出てくるほどでもない。
それでも、お客は来る。この日も10〜20人ほどいただろうか。
ただ、浴槽も洗い場も充分なスペース確保されているので、
混んでいるという印象は受けない。
黒湯はやはり肌にはいい感じ。
長時間浸かっていると、だんだんと、
「古い、汚い、高い」はどうでもよくなってきた。
客足が絶えないのも判る気がする。
充分温まって、上がる。
脱衣所も古臭いが、それがなんだか
遠くに旅した気分にさせてくれた。
結局、温泉の不思議な魅力にやられて、
すっかりいい気分でウチに帰ったのであった。
