2007年06月07日

「バベル」

旧約聖書、創世記11章のバベルの塔の物語では、
元々ひとつの言語を話していた人類が、
天まで届く塔を建てることを企てるほどの傲慢に陥り、
神の怒りを買い、バラバラの言語を話すようにされたことが書かれている。
それ以降、人類はCOMMUNICATION BREAKDOWNに悩まされ続けている。

文明の発達に伴い、我々は自らが暮らす領域から、異なった領域へ、
いとも簡単に境界線を越えることができるようになった。
アメリカ人夫婦は観光バスでモロッコの砂漠を行くこともできるし、
留守番の子供達とメイドのメキシコ人おばさんは、
おばさんの甥っ子のクルマで米墨国境を越えることだってできる。
東京では聾唖の女子高生と健常者のイケメンが
ドラッグ、アルコール、トランスミュージックの力を借りて親密になる。

人はどこにいようと、いいことばかりがあるわけではないが、
コミュニケーションが難しい「あっち側」に渡った時には、
些細なことがとんでもないトラブルに発展する恐れが増大する。
コミュニケーションの問題は聖書の時代から解決に向かうどころか、
複雑化し、ますます深刻になっているようだ。

モロッコ、メキシコ、東京、遠く離れた場所でのストーリーが
一丁の猟銃により緩やかにリンクするこの映画は、
コミュニケーションの喪失という
重く、その上、地味な問題を主題に据えたにも関わらず、
俳優達の熱演やカンヌ監督賞受賞もあり、多くの関心を集めた。
「お気に入りの映画」になるほど完成度が高いとは感じなかったが
埋もれてしまわないで良かったとは思う。

メキシコ人のこの監督は、米国批判をしようという意図はなかったかもしれない。
しかし、現代、この世界は「米国」と「米国以外」に二分していると言ってもいい状態だ。
世界を丹念に描けば、米国批判っぽい要素が内在されることは謂わば必然かもしれない。
(多くの米国人は気づくこともないかもしれないような、やんわりとした口調ではあるが)
カトリック的な視点をなんとなく感じたのも、監督の出自から納得できた。

さて、外国映画の中の日本というと、たまに勘違いっぽいオカシイ所もあったりして、
渋谷の女子高生がオシャレな店で箸でメシ食ってるのはどうかなとも思ったが、
まあ、ナイわけでもない光景。
しかしラスト近くであり得ないカット発見。
刑事がひとりで焼酎をあおるメシ屋の店内のテレビのチャンネルがあっていたのは
NHKでも日テレでもTBSでもCXでもテレ朝でも、そしてテレ東でもなく、
MXTV! あり得な〜い!

役所広司の役名が「ヤスジロウ」だったのは小津先生へのオマージュかな?
ラベル:映画 バベル
posted by えいはち at 14:05| Comment(2) | TrackBack(5) | CULTURE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ごぶさたしています。
先ほどはコメントをありがとうございました。

写真館のほうを拝見させていただきました。
膨大な量の画像ですね!
今後とも楽しみにしております。

>現代、この世界は「米国」と「米国以外」に二分していると言ってもいい状態だ。

ほんとうにそう思います。そして米国以外の国々には
多かれ少なかれ、米国の力の痕跡が記されているのでしょうね。。。

Posted by masktopia at 2007年06月07日 23:40
masktopiaさん
写真館へのご訪問もありがとうございます。

神によって諸民族が散り散りにさせられ、
現代、米国がそれをさらに進めているような気もしました。
米国は神のごとくふるまってやがるなあ…、
ウチの国はそんな米国と一体化してるようには思われたくないんですけどね。
Posted by えいはち at 2007年06月08日 09:14
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