地下にあるので、晴天の昼なんかに行くとちょっともったいない気がする。
そんなときは広々とした窓からの眺めも良い渋谷区スポーツセンターへ。
(代々木のオリンピック記念青少年センターという手もあるが)
その後、風呂屋なら最寄は西原商店街の仙石湯なのだが、
暖かくなったので、密かな野望、渋谷区内の銭湯全踏破を再開させるべく、
別のところへ行くことにした。西原商店街の道を代々木上原方面に行き、
小田急線にぶつかる手前で路地に入ると、大黒湯がある。
都内の風呂屋の多くと同じように、ここも上はマンション。
ちょっと判りにくいところにあるが、よくよく探すと、四角い煙突が見える。
路地を覗くと看板発見。

行って見ると、自転車置場もある。

本来はマンション居住者用だが、
風呂屋の客も停めてよいと書かれていたので停める。
ところが、ここに面した入り口はマンションのものだけ。
風呂は?

脇の細い隙間から見ると、その先が風呂屋らしい。
奥へ進むとこんな感じの入り口。

入ってみると、マンション銭湯だというのに、妙なレトロっぽさ。
脱衣所には昭和をプンプンと臭わすアイテムが雑多に存在している。
面白そうだが、後でゆっくり眺めようと、まずは風呂へ。
それほど広くはないが、こじんまりとまとまっていて、不思議に居心地が良い。
ミストサウナもあるのだが、別料金だと勘違いして入らなかった。ドジった。
(別室のサウナは別料金)
充分温まったら、上がってじっくり脱衣所観察。
象牙の彫り物、ガラスケースに入った人形などの置物の向こう、
壁には少々色あせたサイン色紙がいくつか飾られている。
マルベル堂のブロマイドが添えられているものもある。
都はるみ、青空球児・好児、真木ひでと、う〜ん渋すぎる!
その脇にはたくさんのチケットが収められた額。
輪島功一、ファイティング原田、海老原博幸らのタイトルマッチのもの。
さらに、ジャイアント馬場とかプロレスのものも混じってる。マニア垂涎。
いろんな銭湯で見かけるタニタのデジタル体重計もあるのだが、
それとは別に古〜い針の体重計もあって、これがまたずんぐりとした珍しい形。
別の壁に目を移せば、歴代内閣総理大臣の顔写真のポスター。
中央で一番大きく写ってる、つまりその当時の総理は、中曽根さん。
さらには愛子様が生まれたばかりの頃の皇室ご一家のお写真。
その横には、ブッシュ(父)を中央にして4代前までの米大統領、
つまりレーガン、カーター、フォード、ニクソンの5人が並んだ写真。
そして、希代の無責任宰相、安部晋三の父で、
志半ばで病に倒れた安部晋太郎の似顔絵。
「永年勤続表彰を祝う会」のようなことが書かれていた。
ここまで徹底的に「コンサバ」だと気持ちが良い。
風呂場がそんなに広くないので、湯船に浸かりながらも、
ガラス越しにこの脱衣所を眺めることができて、
鄙びた地方の湯治場のような雰囲気を存分に味わうことができる。
それも、わざわざレトロっぽさを演出したのではなく、
素のまんまというのが泣かせるではないか。
あがってから、入り口付近を観察。
僕が入ってきたのとはこの建物を挟んで反対側になる路地。
こちらのほうが正面ということになるようだ。
で、そこから玄関までの間は、ご覧のように塩ビの屋根はあるが壁はなく屋外だ。

そこが「コインランドリー」となっている。脱衣所同様、サイン色紙も多数。

サイン色紙の中には為書きに、
スナックみたいなカタカナの名前が書かれたものもある。
ここの関係者がかつてやっていたお店でもらったものであろうか。
そしてここにもなぜかやっぱり安部晋太郎。
そういえば安部晋三は富ヶ谷に住んでるんだっけ? 親の代からかな?
なら、ご近所さんってことかな。

単に渋谷区銭湯全踏破の1ステップのつもりで寄っただけだったが、
思いがけず面白いスポットを発見してしまった。
この地は、西原のほうからも上原のほうからも坂の下、
つまりスリバチの底にあたるところでもあり、
胎内回帰的感覚も味わえるなあ、などと思いつつ、
自転車に乗って帰路に着くため、小田急線沿いに山手通りへ向かえば、
ちょっと前の記事でやっぱり胎内回帰的感覚のことを書いた、ダージリンの前に出た。
なるほどね。
僕より前に訪問されていた与一さんのブログ 空も山も風も 渋谷区の銭湯 大黒湯