5本すべてを見に行ったのだが、
その時、さんざん予告編を見せつけられたのが、このグロそうなハンガリー映画。
パールフィ・ジョルジ監督作品「タクシデルミア〜ある剥製師の遺言〜」。
この監督の前作「ハックル」も摩訶不思議な作品であった、
シャックリが止まらないジイサンがいる田舎町。
ほとんどセリフがなく、エキセントリックな映像の羅列が続く。
町には怪しげな事件が起きつつあるようだが、最後までハッキリしないまま。
のどかな風景がかえって不気味さを増幅させ、シニカルな文明批評が見え隠れしていた。
今作は、というと、斬新な映像手法はそのままだが、
セリフは普通にあるどころか、親子三代に渡る「大河ドラマ」ともいえるストーリーと、
これでもかと言わんばかりのエロ&グロが加わり、
面白かったがあまり印象は強くなかった前作とは、
比較にならないほどのインパクトを叩きつける。
第二次大戦時、寒村に配置された当番兵。
上役の中尉とそのブタのような奥さん、2人の娘も一緒。
日々、中尉にコキ使われながらも、カワイイ娘さんたちを覗き見して、
妄想三昧、オナニー三昧。映倫って、いつからペニスはOKになったの?
飛び出す絵本に入り込んでマッチ売りの少女にまで手を出す始末。
結局、若い娘には相手されなかったけど、ブタ奥さんに誘惑され、子種放出。
できた子供はやっぱりブタさん。
共産主義政権時代、ブタさんは成長し、祖国を代表する大食いアスリートになった。
古都ケチケメートで催された大食い大会。参加しているのは東側の国家ばかり。
冷戦時、鉄のカーテンの向こうでホントにこんなことやってたのかなあ?
「IOCが公認間近」なんて、ありえないコト言ってるし。
とても人間の食い物とは思えない代物、まさにブタのエサをひたすら掻っ込み、
競技の合間にはどの選手もリバース、リバース、リバース!
(隣の席に座ってた女性、下向いて耳も塞いでた)
ブタさん、ソ連選手を猛追するが一歩及ばずその場でぶっ倒れちゃって病院送り。
お見舞いに来たのは会場で応援してた、やっぱり丸々肥えた女性大食いアスリート。
2人は恋に落ち、結婚。そして子供が生まれた。
現代、息子は成長し、剥製店を営む職人に。
仕事を済ませ店を閉め、向かうのはスーパーマーケット。
自由化されモノが豊富に並ぶ陳列棚からマーガリンとか段ボールごと購入。
レジの女の子に毎回声をかけるが、つれない返事。
大量の食料品を持って行く先は薄暗い部屋。
そこにはオリに閉じ込められた猫と暮らす、身動きできないほど太ってしまった父。
まるで「ギルバート・グレイプ」のお母さん、
いや、「スター・ウォーズ」のジャバ・ザ・ハット。
過去の栄光、大食い大会のビデオを繰り返し見ながら、チョコバーを包み紙ごと食っちまう。
母は愛想をつかし家出、献身的に世話してくれる息子にも悪態をつく。
ついにキレた息子は猫のオリを開けたまま部屋を飛び出す。
数日後、スーパーの女の子も辞めたらしく、ブルーな気持ちで、
父の様子を見に来ると、猫に腹を食いちぎられ臓物を引っ張り出されて絶命している父。
すべてを失ったと感じたのだろうか、彼は一世一代の作品に取り掛かり、見事完成させる。
たまたま彼に仕事を依頼していた大学教授が店を訪れ、この最後の作品を発見する。
この最後の作品が絶対的に美しいものかどうかは考え物だが、
フィレンツェのアカデミア美術館のミケランジェロ、ダヴィデ像を彷彿とさせる、
最後のシーンはやはり美しいと感じてしまう。
この美しさに辿りつくために、父、祖父のあの醜さの蓄積があったのだ。
単にエロくてグロいだけでなく、なんて深い映画なのだろうか。
エログロナンセンスならぬエログロハイセンス!
パールフィ・ジョルジという監督、これからどの方向に向かうのか、
この路線を突っ走るのか、それとも、
エログロはたまたまこの作品だけで、次は違った側面を見せるのか、
非常に楽しみである。
* * *
実は自分の前世はハンガリー人じゃないかと思っているほど、
ハンガリーという国が気になっている。
先日、グヤーシュを作った時の記事はこちら。
http://ei8at12so.seesaa.net/article/94239881.html
バルトークやコダーイの旋律、
ブダペスト・ナショナルギャラリーなどで見た絵画など、
他のヨーロッパとはひとあじ違う芸術はもちろんだが、
あまり知られていないが第二次大戦中は枢軸国だったこの国の戦後の歩み方とか、
ポーランド、チェコ、ルーマニアなどでは大騒ぎの末だった共産体制の放棄を、
あまりにもさらっとやっちゃったこととか、
さらには国の紋章のテッペンの十字架が曲がってることとか、

いろいろひっくるめて、妙にシンパシーを感じるのである。
そしてもちろん映画も気になる。
最初に見たのは、25年くらい前、
アテネフランセ文化センターで行われたハンガリー映画祭での、
「死海のほとり」という作品。
さらに、東京ドームシティ内の映画館に見に行った、「私の20世紀」。
ちょうどドームではローリング・ストーンズがコンサートやっていたので、
初来日した1990年のことだろう。
1995年に念願の旅行。ホテルのTVで、言葉も解らず見た映画もヘンで良かった。
そして前述の「ハックル」。
その前の2000年頃、「ヴェルクマイスター・ハーモニー」を見逃したのは、
今でも後悔している。
なぜだか妙な映画を作る伝統でもあるのだろうか。
まとめて見たらどうにかなっちゃいそう。
でも、どうにかなっちゃいたい気もするので、
ハンガリー映画特集、どっかでやらないかなあ。





男根が出ても、
別に下品さを感じなかったんだけど、
あれはさあ、
表現がストレートすぎるからなのかなあ?
醜悪さというのは、美しいよね。
一緒に見に行った主婦さんも、
別に出産経験者なので、
面白かったねーと言っていた。
「死刑」になっちゃったけど。
よく一緒に行く人いたねえ。
エログロハイセンスでしたねぇ。
ハンガリー映画特集、いいですね。
開催されたら私も行きたいです。
東欧映画2本立てとか、
早稲田松竹なんかが企画しそうですね。
この手の映画はDVD化されてもレンタルがなかなかないのが困ります。
2本立てと言わず、それこそハンガリー映画祭みたいなのやって欲しいです。
記事中の「死海のほとり」のビデオでもないかなと、ブダペスト市内を探し回りましたが、1995年当時、ハンガリーではビデオソフト自体が売ってませんでした。
ハンガリー映画祭、是非やってほしいです。
映画祭などに出品されているタル・ベーラの作品なども日本に来てほしいし。
年末に観たハンガリー・アニメもすごぶる面白かったんですよ。
もちろんパールフィ・ジョルジには今後も注目です。
「ヴェルクマイスター・ハーモニー」もタル・ベーラの作品でした。
未見のものをいきなりDVDで買うって考えられないけど、しちゃうかも。
本作、何故、NHKが放映を放棄したのか?
これは絶対に放映すれば話題になると思う。
観終わった後は、彼ら3人の悲劇に胸が締め付けられました。
「ヴェルクマイスター・ハーモニー」私はCS放映で鑑賞しました。こちらもTBさせていただきますね。ハンガリー映画って独特の政治センス持ってると思う。
認証エラーで再度送信します。ひょっとしてダブって送信だったらゴメンなさい。
お先にTBさせていただきました。
この作品、グロいですが悪ふざけがないのが良いのでしょう。ホント、NHKは度胸ないですね。もっとも、放映したら玉袋筋太郎が「ダブルスタンダードだ!」って怒るかも。
「ヴェルクマイスター・ハーモニー」もご覧になられていたのですね。日本公開は2002年でしたか。確か引っ越す前のユーロスペースだったと思いますが、前売りまで買っててうっかり見逃しちゃいました。CSとかで放映されるのですね。ウチ、地上波だけなんです。2011年からどうしよう…。